前野良沢〔享保8(1723)年~享和3(1803)年〕は江戸中期の蘭学者、中津藩医です。江戸詰めの藩医だった良沢は人生の大半を江戸で過ごしています。
江戸で青木昆陽、長崎で吉雄耕牛からオランダ語を学び、中津藩主奥平昌鹿の厚遇をうけ長崎に遊学しました。昌鹿は良沢のことをからかって「蘭学の化け物」と呼び、良沢はそこから「蘭化」と号しました。
長崎遊学の途中で、良沢はオランダ語の解剖書『ターヘル・アナトミア』を入手します。江戸に戻った良沢は明和8(1771)年、小塚原刑場で杉田玄白、中川淳庵らとともに刑者の腑分け(解剖)に立ち会います。その際、携えていたオランダの解剖書「ターヘル・アナトミア」の図の正確さに驚き、翻訳を決意しました。しかし、ほとんどオランダ語の分からない中での翻訳は困難を極め、一語を訳すのに丸一日費やすこともありました。
こうして苦労苦心の末完成した翻訳書の『解体新書』でしたが、良沢の名前は記されていません。一説には、翻訳の出来が満足のいくものではなかったため、良沢が名前を載せるのを拒んだといいます。
『解体新書』の翻訳後、さらにオランダ語の研究を続けた良沢は、オランダ語入門書『和蘭訳筌』や天文学書『測曜璣図説』など様々な史料を翻訳しました。享和3(1803)年10月17日、後の世に「蘭学の開祖」と仰がれる前野良沢は、81年の生涯を閉じました。
平成30年の正月時代劇として、解体新書を翻訳した前野良沢と杉田玄白を主人公に、『風雲児たち ~蘭学革命(れぼりゅうし)篇~』が平成30年1月1日にNHK総合で放送されました。
放送を記念し、小幡記念図書館の郷土資料コーナーにあらたに「前野良沢コーナー」を設けました。前野良沢や解体新書に関する本をはじめ、中津の蘭学や医学に関する本、ドラマの原作マンガを展示しています。
ドラマの原作マンガ『風雲児たち』(みなもと太郎著、リイド社刊、全20巻)には、前野良沢は第4巻から登場します。
また『風雲児たち』には、今の日本を築き上げた先人たちのエピソードがぎっしり詰まっており、読み通せば江戸幕府成立から幕末までを一気に知ることができます。
しかし、けっして教育的な歴史マンガではなく、登場人物が皆、コミカルなキャラクターにデフォルメされて描かれているので楽しく読むことができます。
前野良沢以外にも福沢諭吉や島田虎之助など、郷土ゆかりの偉人も多く登場しています。
ぜひ、ご利用ください。